京浜急行電鉄株式会社様(以下、京急電鉄様)は、鉄道事業を中心に幅広い事業を展開する企業です。今回、京急電鉄様は、サステナビリティ情報開示の精度向上を目指し、2023年度の環境データ(スコープ1・ 2排出量およびエネルギー使用量)に対して、LRQAによるISAE 3000およびISO 14064-3:2019を用いた限定的レベルの独立保証業務を実施されました。(取材年月:2024年11月)
京急電鉄様は、サステナビリティに関する取り組みを積極的に進めています。特に、気候変動問題への対応として、「京急グルー プ 2050年カーボンニュートラル」という長期環境目標を掲げています。この目標の実現に向けて、省エネルギー施策の推進や再生可能エネルギーの導入などの取り組みを行っています。
今回は、経営戦略室 サステナビリティ推進担当 課長 尾原 瑞希 様、経営戦略室 サステナビリティ推進担当 主査 熊﨑 千夏 様に、環境データ第三者検証の決断に至る経緯や苦労した点、第三者検証の印象や今後の展望などについてお話を伺いました。
今回の環境データ第三者検証を考慮したきっかけと目的について教えていただけますか?
最大の目的は、第三者検証を通じてより精度の高いGHG(温室効果ガス)排出量の算定を実現し、当社が開示するデータの正確性を高めることです。昨今の日本社会では、有価証券報告書等におけるサステナビリティ情報開示への要請や関心が非常に高まっています。当社でも有価証券報告書にサステナビリティに関する情報を開示してきましたが、特にGHG排出量などの定量的な数字に関しては、自社対応だけではデータの信頼性を確保すること、そしてそれを証明することが難しいと感じていました。SSBJ(サステナビリティ基準委員会)基準においても第三者保証の必要性について議論されていることから、適用時期についてはまだ先の話になりますが、準備段階から有価証券報告書への対応を含め、第三者保証の取得とより精度の高い算定が実施できる体制を必要としていました。
同様に、情報開示要請への対応という意味では、CDPのスコアリングも検討要因の一つでした。当社では、2023年度から役員報酬の評価指標の一部にCDPの評価結果が採用されており、CDPのスコア維持・向上への取り組みを重要視しています。第三者検証の取得の有無がスコアリングに大きく影響することは認識していましたので、まずはスコープ1とスコープ2の保証取得を通 じてスコアアップを目指し、次のステップに進むために第三者検証の検討を始めました。
またきっかけとしては、社内的な理由ですが、 2023年度にGHG排出量の算定をシステム 化できたことが大きく影響しています。以前はExcelを用いて部署や会社単位での年次データを収集し算定していましたが、システム化により、事業拠点ごとかつ月次でデータを集計できる体制を整えることができました。このように第三者検証を受ける準備が整ったことも後押しとなり、第三者検証の実施を決断しました。また、京急線全線において運行に使用する全電力を再生可能エネルギー由来の電力に置き換える取り組みの発表があったタイミング等も重なり、社内におけるサステナビリティ情報開示に関する機運が高まっていたことから、スムーズに話を進めることができました。
以前にあった課題や苦労した点、またそれに対して工夫した点があれば教えていただけますか?
以前にあった課題としては、GHG排出量の算定に対する社内の認識が十分ではなかったことが挙げられます。部門によっても対応や認識に温度差があったため、社会的なトレンドや要求も踏まえ、「なぜやらなければいけないのか」という点から各部門への説明に回っていました。また、これは先ほどお話しした算定システム導入のきっかけでもありますが、当時は単位ミスが多発するなど算定の精度を確保することや、データそのものの取得に苦労することが非常に多くありました。
『京浜急行電鉄株式会社様 事例紹介』
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