食品安全の信頼性をより深く知りたいという消費者の欲求が高まる中、食品メーカーは完全な透明性とトレーサビリティを提供できるよう、準備を始める必要があります。
食品業界では、食品加工業者が自社のサプライチェーンをより深く理解しようとする動きや、より多くの情報に基づいた意思決定のためにデータとAIをどのように活用できるかの議論が進んでいる等、多くの新しい機会が増えています。
食品業界として、各組織が生み出す製品データの量は膨大なものです。内部および外部のソースからのデータをどのように効率的に組み合わせ、製品の完全性に向けた最も重大なリスクを描き出すことができるかが今後の課題になります。適切なリスク分類に裏打ちされたAIの適用が前面に押し出されることで、リスク軽減へとつながり、また重点すべき焦点も特定することが可能になります。
消費者習慣の分析や新製品開発に関するより深い洞察を得るためにAIを利用することは、今日では一般的になっています。一方で、ほとんどの食品メーカーにとって、製品リスクを軽減することを目的とした”透明性の確立”は比較的新しいことです。製品リコールや自社製品の不具合、サプライネットワーク監査などのデータを活用し、リスク回避を優位に進めることが徐々に一般的になりつつあります。
しかし、自社データによる重要なサプライヤー・リスクの透明化には限界があります。これには業界関係者間の協力的なアプローチが必要ですが、サプライチェーンとの間に信頼できるネットワークを開くことに躊躇している組織が多いのが現状です。企業間でデータや情報を共有することに消極的な組織もありますが、信頼関係が構築されない限り、完全な透明性は確立することは難しくなります。
製造業がデジタル化された状況を考慮すると、サプライチェーン全体でデータが盗まれる可能性が新たな課題になります。最悪の場合、製品の信頼性が損なわれ、不正行為や製品回収の可能性が高まります。つまり、こういったリスクの透明性を確保するためには、基本的な攻撃から守られているという信頼をどのように構築するか、攻撃された場合にどのような復旧計画があるか、第三者のサプライヤーはどの程度準備されているかを確認することが不可欠です。
ブロックチェーンソリューション
新しい技術としてブロックチェーンの取り組みも開発中です。一例としてSecQuAL(Secure Quality Assured Logistics for Digital Food Ecosystems)という団体があり、テクノロジープロバイダーと保証を組み合わせたコンソーシアムで、当初は食品廃棄物の削減と消費者の信頼を高めるために、豚肉生産におけるスマートラベルの適用に向けた取り組みを行っておりました。
SecQuALは、英国を拠点とする高成長の新しいイノベーターが、ブロックチェーン技術を通じて、食品サプライチェーンのデジタル化の進展と出所の透明性を支援する、重要かつ統合的な技術を開発することを可能にしています。
現在開発中のスマートラベルは、食品に貼付することでリアルタイムに追跡・監視を可能にできるデジタルIDです。この技術は、食品の出所に関する情報の提供、コールドチェーン状態の監視、より正確な賞味期限の予測、さらには消費者から生産者への直接的なフィードバックへと応用することができます。またスマートラベリングは、サプライチェーンのボトルネックや非効率性を特定するだけでなく、遠隔地からの規制の監視やコンプライアンスを可能にすることができます。
見解
オンライン取引の規模が大きくなり、大量の取引と供給が必要となるため、テクノロジーの力は今後ますます重要になると考えられます。プロセスをデジタル化し、紙ベースの分析から脱却することで、食品メーカーはより効率的になり、プロセスを理解し、必要な改善を行い、リスクを予見することができるようになります。
ブロックチェーンとAIの両輪でデータを管理し、関係者間で共有することが、サプライチェーンをより深く理解し、消費者に透明性を提供するための基本になると考えられます。これにより、消費者と食品メーカーの双方が、より多くの情報に基づいた意思決定を行うことができるようになります。
2021年8月 Food Manufacture掲載