Skip content
Matcha ice cream

GFSIカンファレンス2026:業界の変化を読み解く

食品安全リスクの動向と見解

LRQAは過去25年にわたりGFSIカンファレンスに参加し、食品安全に関するリスクの変化に対して、食品業界がどのように対応してきたのかを継続的に見てきました。

今年のGFSIカンファレンスでは、これまでとはやや異なる雰囲気が感じられました。既存の取り組みを補強することに重きを置くというよりも、それらを実務の中で引き続き有効なものとするために、どのように変えていくべきかに議論の焦点が移っていたと言えます。

お客様とのミーティング、ラウンドテーブル、非公式な意見交換を通じて、共通した認識が早い段階で明らかになりました。その背景には、データの活用が進む一方で、グローバルなサプライチェーンが一層複雑化していること、気候変動に伴う混乱が現実の影響として表れていること、そして規制当局、消費者、利害関係者から透明性を求める声がこれまで以上に高まっていることがあります。

著者

本記事で紹介する見解は、カンファレンス期間中、主要ブランドや政策立案者、食品安全の専門家とともに会場で議論を重ねた、LRQAの専門家であるイアン・スポルディングスチュアート・ケリーエンリコ・メンモキンバリー・コフィンマーク・モラレスの知見を反映したものです。

認証から見解へ

認証は、業界全体に共通する枠組みや一貫性、基準を提供する重要な基盤であり続けています。一方で、多くの組織では、審査と審査の間の期間、すなわちリスクがその時々で変化していく領域に、より強い関心が向けられるようになっています。

多くの企業は膨大なデータを保有していますが、それらを一体として整理し、リスクを把握し対応につなげる形にまとめることは、依然として大きな課題です。LRQAのグローバルアカウント担当ディレクターであるエンリコ・メンモは、「お客様は、審査結果、サプライヤーに関するデータ、インシデント、規制当局からの情報、外部リスク要因を、一つのリスク像として整理する点で苦慮している」と述べており、データが存在していても、それを実務で活かし切れていない状況を指摘しています。

こうした背景から、これらの情報をより効果的に取り込み、審査のアウトプットと幅広いデータを組み合わせて、判断の質とタイミングを高めようとする動きが広がっています。デジタル化やAIは、もはや検討段階にとどまるものではなく、将来を見据えた見解の把握や状況の可視化を支える現実的な手段として位置づけられつつあります。こうした流れは、LRQAが開催したEiQ Product Integrityのラウンドテーブルでも明確に示されており、食品安全をより一貫性のあるリスクベースで管理したいという強い関心が寄せられました。

審査の役割はどのように変わりつつあるのか

審査の枠組みや目的は、あらためて見直され続けています。特に、業務の複雑化やスピードの加速によって、従来の手法だけでは十分に機能しにくい環境では、その傾向が顕著です。食品安全の基盤として、認証が不可欠である点は変わりません。GFSIが承認する規格は引き続き世界的に広がっており、業界全体で信頼され、広く採用されている共通の指標としての役割を強めています。

一方で、認証はそれ単体で完結するものではなく、リスクが刻々と変化する実態を踏まえた、より継続的でリスクベースの取り組みと組み合わせる必要があるという認識が広がっています。

パネルディスカッションでは、「チェックリスト中心の審査は、食品安全の“整えられた姿”を確認するにとどまり、実際にリスクマネジメントがどれほど有効に機能しているかを十分に捉えられない」という指摘がありました。この見解は、現場の実態をより正確に反映した審査を求める参加者の共感を強く呼びました。

業務の文脈に沿った審査への期待は高まっており、プロセスやリスクへの着目がより重視される一方で、審査員の力量の重要性もあらためて認識されています。効果的な評価は、仕組みの設計だけでなく、専門的な判断力に大きく支えられています。LRQA サプライチェーン保証担当テクニカルディレクターのキンバリー・コフィンは、食品安全は本質的に人が関わる分野であり、現場での気づき、観察、組織文化を通じてこそ、リスクを正しく理解し、管理できると述べています。

よりつながりのあるリスクの捉え方へ

カンファレンス全体を通じて、リスクをより包括的につなげて捉える考え方が重要なテーマとなっていました。これは単一のデータにとどまらず、情報がどのように共有され、解釈され、バリューチェーン全体で活用されるかにまで及んでいます。食品安全は競争領域ではないという従来からの考え方も、単独では管理できないリスクが増えている今、あらためてその重要性が強調されています。

組織内外の分断を解消しようとする動きも目立っており、内部システムと外部パートナーをより強く結び付けることで、課題発生時の可視性を高め、対応を連携させようとする取り組みが進んでいます。同時に、規制当局からの監督強化や消費者の意識の高まりを背景に、透明性への期待も一段と高まっています。キンバリーはこれを、「いま求められているのは保証ではなく、証明である」と表現しています。

こうした変化は、リスクの定義そのものにも及んでいます。食品安全は、気候変動による影響、サプライチェーンの混乱、事業環境の変化といった要素が絡み合う、より広範で相互に関係したリスクの一部として捉えられるようになっています。エンリコ・メンモは、気候変動に起因するリスクと、食品安全システムのレジリエンスを結び付けて考える動きが進んでいると指摘し、食品安全、製品インテグリティ、ESG、全社的なリスクを統合的に捉える考え方への移行を示しています。

こうしたテーマが重なり合う中で、個別に対応するのではなく、全体としてどのように管理していくかに関心が移りつつあります。LRQAのCEOであるイアン・スポールディングは、データを一体として集約し、複数の目的に応える、より効果的なプログラムを運用できる可能性は明らかだと述べ、複雑化するリスク環境への対応力を高める意義を強調しています。

保証機関に求められる役割の変化

こうした流れとともに、保証機関に対する期待も変化しています。お客様は認証にとどまらず、より実効性の高いリスクマネジメントの枠組みの設計や運用に関する支援を求めるようになっています。そこには、ガバナンス、データの統合、サプライヤーの管理、プログラムの有効性評価、そしてそれらを一体として機能させるための手段が含まれます。

GFSIの会場では、データを軸とした統合的な取り組みへの関心の高さが明確に示されていました。LRQAのフード・飲料分野責任者であるマーク・モラレスは、多くの組織では今も、サプライヤーリスクの管理を手作業や属人的なプロセスに頼っており、従来の手法だけでは実務に活かせる見解を十分に得られない場合があると述べています。この状況が、複雑なサプライチェーン全体で、一貫性と拡張性をもってデータと見解、管理を結び付ける方法への関心を高めています。

同時に、価値の捉え方自体も変わりつつあります。過去を振り返る報告から、将来を見据えた見解へと軸足が移り、審査からいかに多くの価値を引き出せるかが対話の中心になっています。そこでは、専門性を実務にどう結び付けるかが重要なテーマとなっています。

会場の空気を読み解く

カンファレンス自体に対する受け止め方はさまざまで、多くの参加者が、公式セッションよりも直接的な対話に重きを置いていました。これは、業界全体が変化の途上にあり、既存の枠組みを現実の状況に照らして再評価し、より実践的で成果につながる取り組みを求めている姿勢の表れとも言えます。

LRQAのコマーシャルアドバイザーであるスチュアート・ケリーは、業界の議論と実務の間に広がりつつあるギャップを率直に指摘しました。意図よりも証拠が繰り返し語られる中で、リスクのスピードに比べ、実行が追いついていない領域もあります。

すでに新たな取り組みを進め、将来に向けた体制を整えつつある組織がある一方で、変化への対応が遅れている企業も少なくありません。新型コロナウイルス感染症の流行から7年が経過した現在も、地政学的・経済的な混乱は続いています。

リスクの進行は止まらず、期待が緩むこともありません。食品事業者に求められているのは、こうした変化を正しく認識し、より複雑な事業環境に適応し、堅牢で説明可能なリスクマネジメントを通じて対応のスピードを維持することです。次の課題は必ず訪れます。その備えが不可欠です。

LRQA CEO イアン・スポルディングのコメント:

「信頼性、透明性、トレーサビリティが、食品安全への取り組み方を形づくる要素として、ますます明確になってきています。これに加え、審査や認証を土台としつつ、データをより効果的に活用することで、リスクをより深く理解し、低減していく重要性も高まっています。いま求められているのは、こうした要素を結び付け、分断を解消し、現在の事業環境が持つ複雑さを反映した、より統合的な取り組みを構築することです。」

LRQAは、まさにこの点に引き続き注力しています。技術的な専門性にイノベーションとデジタルの力を組み合わせることで、食品業界が変化し続けるリスクをより明確に捉え、的確に対応できるよう支援していきます。

食品・飲料分野におけるLRQAのサービスについて詳しく見る

EiQ Product Integrityのご紹介

EiQ Product Integrityは、審査データ、サプライヤーに関する情報、外部のリスク要因を統合し、リスクを一体として把握できる環境を提供します。過去の事象を振り返る報告にとどまらず、判断につながる明確な見解を示すことで、意思決定の質を高め、サプライチェーン全体の可視性を向上させ、製品インテグリティをタイムリーに守ることを可能にします。

EiQ

お問い合わせ
Shipping containers in port

最新ニュース、インサイト、今後のイベント