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ポッドキャスト: ISOと気候変動 - ISOマネジメントシステム規格の多くが追補改訂される理由と、規格の利用者にとって何を意味するのか?
ISOと気候変動 - ISOマネジメントシステム規格の多くが追補改訂される理由と、規格の利用者にとって何を意味するのか?
2024年1月5日 - 23分
国際標準化機構(ISO)は、マネジメントシステム規格の多くを追補改訂し、気候変動に関連する追加要求事項と注記を追加しました。
本エピソードでは、ISO労働安全衛生マネジメント専門委員会(ISO/TC 283)の議長(ISO 45000シリーズ規格の責任者)であるマーティン・コッタム氏をお招きし、気候変動に関連してISOが行っている対応と、これらの変更が規格の利用者にどのような影響を与えるかについて議論します。
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こんにちは。世界中のリスナーの皆さん、LRQAのfuture in focusポッドキャストへようこそ。 私の名前はホリー・プラケットです。LRQAのグローバルマーケティングエグゼクティブで、本日このポッドキャストエピソードのホストを務めさせていただきます。 今回は、このポッドキャストの再登場ゲスト、マーティン・コットンとご一緒します。ポッドキャストに戻ってきてくれてうれしいです。お元気ですか?
こんにちは、ホリー。元気です。ポッドキャストに戻れてうれしいです。
新しい視聴者の方々に手短に自己紹介をお願いしたいのですが、簡単にご自身の役割を何を少し説明していただけますか?
はい、もちろんです。S私はISO 45000シリーズの規格を所有するISO労働安全衛生マネジメント専門委員会TC283の議長を務めており、2018年の委員会設立以来、議長を務めています。そしてこの度、議長としての任期を延長することになりました、 私は25年以上にわたって、まず国家レベルで、次に国際レベルで、労働安全衛生の規格の開発に携わってきました。 また、アセットマネジメントに関する規格にも携わってきました。当初は品質、労働安全衛生とアセットマネジメントシステムの審査員として活動し、その後、組織のマネジメントシステム、その有効性と規格への適合性の責任者となりました。現在、私の本業においても、規格が大きな役割を果たしています。
私は、当時のLRQAを含むロイドレジスター・グループに、最終的には、技術保証および品質ディレクターとして31年間勤務しました。
ありがとうございました。今日は、ISOが気候変動に関連してどのような取り組みを行っているのか、またそれがどのようにマネジメントシステム規格の追補改訂につながっていくのかという点について議論したいと思います。まず、なぜこういった変化をもたらしているのか、ご説明していただけますか?
もちろんです。今日私たちが議論しているすべての行動の出発点は、2021年のISO総会で署名されたISOのロンドン宣言です。この宣言では、ISOはそのメンバー、つまり各国の標準化機関、その他のステークホルダーやパートナーと協力して、国際標準や出版物がパリ協定、国連のSDGs、国連の適応とレジリエンスに関する行動要請の達成を加速することを約束しました。そしてこれは、気候変動への対応をISO組織全体の戦略的優先事項とすることに他なりません。なぜこのことが重要だと私が感じたかというと......それは、国際規格が極めて重要な役割を果たしているからだと考えていたからです。特に、国際貿易のあらゆる面において信頼を生み出すことで、グローバル経済を下支えしているからです。
特にISOには、気候変動への適応、温室効果ガス排出量の定量化、優良事例の普及や環境マネジメントの推進など、気候アジェンダの支援に不可欠な規格が数多くあります。しかし、より一般的には、最新の国際規格がなければ、産業界やその他の利害関係者は、必要なことを達成するのに苦労するはずです。
世界中で効果的な気候変動対策が実施され、私たちがその対策を理解し信頼できるようになるには、共通の定義や共通の測定基準が必要です。私たちはプロセスやデータを検証できなければなりません。そうでなければ、私たちはただ単なる煙と鏡の世界にいることになり、グリーンウォッシングに騙される可能性が非常に高いのです。
これがこの一連の行動の全体的な動機です。ロンドン宣言には、3つの具体的な公約が含まれています。第一に、国際規格や出版物の新規開発、または改訂において、気候科学とそれに関連する移行を積極的に考慮することを推進すること。
第二に、国際規格や出版物の開発において、市民社会や気候変動に最も脆弱な人々の関与を促進すること。
第三に、具体的な行動や取り組み、進捗状況を追跡するための報告メカニズムを詳述した行動計画と測定枠組みを策定し、公表すること。
その最初の公約、すなわち、すべての新規及び改訂規格において気候変動に対応するという公約が、すべてのISO規格の見直しを推進しました。その結果の一つが、今日のテーマであるマネジメントシステム規格の多くを追補改訂するという決定です。ISOのような組織が気候変動対策に真剣に取り組んでいることは、とても素晴らしいことだと思います。
規格の見直しは、規格のポートフォリオ全体で調整されているのか、それとも個々の委員会の判断に委ねられているのかという点に関しては、その両方の要素があります。24,000に及ぶISO規格のすべてのポートフォリオを対象に、トップダウンで見直しが行われました。そして、気候変動とその影響に対処するために更新が必要なすべての規格を特定しました。
その結果、各規格の見直しと更新が行われます。その優先順位に基づく個々の規格の見直しや更新は、関連する規格を管轄する個々の委員会が行うことになります。これがトップダウンの要素ですが、個々の技術委員会が、それぞれの担当領域に関して気候変動の影響を検討し、必要と考えられる行動をとるよう奨励されているというボトムアップの要素もあります。
私が議長を務める労働安全衛生委員会(TC283)は、気候変動が労働安全衛生に及ぼす影響に特化したガイダンス文書を作成するなど、このような取り組みを行った委員会の一例であり、後ほどもう少し詳しくお話しできるかもしれません。
ありがとうございます。24,000もの規格があるのですね。また、いくつかのマネジメントシステム規格の今後の追補改訂について、より具体的に教えていただけますか?まず、どの規格が影響を受けるのでしょうか?
はい。この変更は、先ほど申し上げたトップダウンとボトムアップの中間に位置するものです。これは、すべてのマネジメントシステム規格の調整を行う委員会の主導によるものです。
附属書SLを管轄するのも同じ委員会です。ハーモナイズド・アプローチは、多くのマネジメントシステム規格で使用されている共通の構造と同一のコアテキストを提供するものです。この追補改訂は、品質マネジメントのTC176、環境マネジメントのTC207、労働安全衛生のTC283など、さまざまなマネジメントシステム規格を所有する委員会全体のコンセンサスを表しています。そして、これらの改訂は、ISO会員の投票によって承認されます。繰り返しますが、これは各国の標準化団体です。では、実際にどの規格が影響を受けるのでしょうか?私たちが話しているのは、附属書SLの同一のコアテキストの変更についてです。したがって、これらの変更は、そのコアテキストを使用するすべての規格に影響します。
中核となるテキストには要求事項やshall statementが含まれているため、実際には、これらの変更の影響を受けるのは要求事項を含む規格です。このような規格は、Aタイプのマネジメントシステム規格と呼ばれることもあり、ISO9001、ISO14001、ISO45001など、マネジメントシステム規格の中で最もよく知られています。これらの規格は、実際、適合性評価のために設計されており、独立した第三者認証を含みます。今、3つの規格を挙げましたが、実際には、このプロセスの一環として追補改訂される規格は30以上あり、コアテキストを使用する規格で追補改訂されない唯一の例外は、全面的な改訂版の発行が間近に迫っている規格です。そのような場合、変更は直接改訂版に反映され、追補改訂は行われません。実際、すでに改訂が行われていたある規格は、ここ数週間で、すでに発行に至っています。一例をあげると、医療機関における品質マネジメントシステムに関するISO 7101です。
改訂とは対照的に、追補改訂とは何を意味するのかを明確にする必要があります。追補改訂とは、単に規格の変更点の一覧です。この場合、どのような言葉が追加され、どこに追加されたかを記載した1ページの文書です。追補改訂の発行は、その規格の既存の版を有効なまま残します。これは改訂とは全く異なります。改訂とは、文書全体が新しいバージョンに変更されて再出版され、以前有効であったバージョンに取って代わることです。
特に、間もなく全面的な改訂が行われる規格の例外に関する部分は、視聴者の皆さんにとって非常に有益な情報だと思います。続けて、変更点の詳細を教えていただけますか?
はい、もちろんです。実はとても簡単です。導入される変更は2つだけで、どちらも規格の第4節、「組織の状況」という箇条にあります。そして4.1項では、すべての規格が、組織が活動する背景、マネジメントシステムの目的を達成する能力に関連する外部及び内部の課題を理解し、マネジメントシステムの設計に考慮する必要があるという要求事項を含んでいます。 この4.1項の中に、「組織は、気候変動が関連する課題かどうかを決定しなければならない。」という記述が追加されています。そして、続く第4.2項では、組織が利害関係者のニーズと期待を理解する必要があることを述べています。条項の最後に、以下のような注釈が追加されました。「注記:関連する利害関係者は,気候変動に関する要求事項をもつ可能性がある。」
最初の変更点は、新しい要求事項のようにも読み取れます。気候変動が関連する問題であるかどうか を組織は決定しなければなりませんが、実際は、 組織は、マネジメントシステムの意図した結果を達成する能力に影響を与える、組織の目 的に関連する外部及び内部の課題を明確にしなければならないという、従来からある要求事項に従ったものです。そう考えれば、気候変動が関連する問題であれば、どのような組織でもそのように特定するはずです。 というのも、一般的な要求事項の性質として、関連するものはすべて特定しなければならないからです。そのため、新しい条項が追加されたわけではありません。単に、気候変動がこの問題の一部として考慮されるべきであり、無視されることはありえないということを明確にすることで、このメッセージを強化しているだけなのです。
そして、2つ目の変更点である、関連する利害関係者が気候変動に関連する要求事項をもつ可能性があるというこの記述は、注記として表示されます。そして、注記は規格の性質上、勧告的なものです。繰り返しますが、ここには新しい要求事項はありません。これは、利害関係者のニーズや期待について考え、特定する際に、気候変動を含めるようにという明確な注意喚起にすぎません。ではなぜこのような変更が行われるのか?もしそれが、組織がいずれにせよ行うべきことを行うための単なる注意喚起に過ぎないのであるならば...と、疑問に思うかもしれません。
すべての組織が気候変動の影響を実際に考慮しているわけではないという明確な証拠がいくつかあります。最初から要求事項が明確になっているにもかかわらず、マネジメントシステムで対象とされているすべての分野についてです。例えば、私は個人的に、品質マネジ メントシステムのコンテクストで気候変動を検討している組織は、労働安全衛生マネジメントとの関連で検討している組織よりも多いというフィードバックを聞いています。
これはほんの一例ですが、注意喚起が必要であることを示唆する証拠も出てきています。もちろんそれは、マネジメントシステムの所有者である組織自身に対する注意喚起でもありますが、認証機関や認定機関にとっても有益な注意喚起になることは間違いありません。気候変動から生じるリスクに対して、すべての組織が十分な注意を払い、積極的に対処することを支援し、奨励するための取り組みが本格化しています。
ご説明ありがとうございます。この変更はいつ適用されますか?
おそらく2024年2月末に、影響を受ける30以上の規格がISOから同時に発表されるでしょう。そして追補改訂が発行されれば、事実上、即座に発効します。これは、規格の全面的な改訂が行われる場合とは異なります。ご存知の方も多いと思いますが、通常改訂された要求事項を適用するための移行期間があります。しかし、今回の追補改訂では、そのような移行期間はありません。なぜなら、第一に、変更点が非常に小さいからです。第二に、この変更によって新しい要求事項が導入されることはありません。したがって、長い移行期間を設ける必要はありません。さらに、おそらくですが、まだ確実ではありませんが、この修正案、つまり1ページの文書が規格の利用者に無償で提供されることになるでしょう。
移行期間が長引くことはないと仰っていたことは、視聴者の皆さんにとって本当に有益な情報になると思います。ありがとうございます。続いて、最も多く聞かれるであろう質問に移りますが、この変更が規格の利用者にとってどのような意味を持つのか、また、この変更が利用者にどのような影響を与えるのか、そして、この変更が認証の下でどのように扱われることになるのかについて、もう少しお話しいただけますか?
私たちが何を期待すべきかの手がかりは、これまで私たちがすでに述べてきたことにあると思います。つまり、今回の追補改訂は新しい要求事項を導入するものではないということです。ただ、既存の要求事項への適合の一環として、気候変動への対応の必要性にスポットライトを当てることを目的としています。つまり、気候変動に関連するリスクを組織が考慮することの重要性を、ISOがより明確に示したということです。そして、この兆候は、認証機関が気候変動にさらに焦点を当てることにつながっていくと思います。
もちろん、組織が考慮するよう求められているのは、気候変動そのものに起因するリスクであり、異常気象、サプライチェーンの混乱、業務の中断、労働者の負傷といった形で発生する可能性があります。また、気候変動への適応に伴うリスクも考慮する必要があります。例えば、私が携わっている労働安全衛生の世界では、多くの分野で夜間労働が増加しています。これは屋外作業、特に日中の過度の気温に対応するための農業に関連したものです。しかし、当然ながら、作業を夜間作業に切り替えると、暗闇の時間帯に発生する新たな別のリスクが生じます。つまり、私たちが取る適応策にはリスクが伴うのです。もちろん、気候変動緩和策、例えばCO₂排出量の少ないエネルギーへの転換など、緩和策に伴うリスクもあります。
しかし、ISOがこれらの規格を追補改訂する意向を発表して以来、認証機関や認定機関にはまだ公式なガイダンスが出されていないことに留意してください。私は、規格の利用者として、また元品質責任者として、また認証されたマネジメントシステムの責任者として、その立場を説明していますが、この追補改訂が、認証機関が日常的な定期審査を行うきっかけになることを期待しています。本当に気候変動が組織の状況の一部として考慮されているか、また、利害関係者が要求する可能性のあるトピックがあるかどうかを確認するためです。そして、そこで特定された問題点については、通常の審査プロセスを通じて対処し、必要な場合には気候変動への対応を強化するための時間を確保することになると思います。しかし、マネジメントシステム の新たな審査が行われる場合、気候変動を考慮するという要求事項は、箇条4に規定された要求事項への組織の適合性を評価する最初の審査に不可欠な部分に過ぎないと期待します。
規格の利用者への影響について教えていただき、ありがとうございます。そこから私が受け取ったのは、登録証が再発行される可能性は低いということ、そしてリスナーは今後数週間のうちにこの件についてさらなる情報を得ることを期待すべきだということです。あなたの見解では、この追補改訂を参照するために登録証の再発行が要求されると予想されていますか?
今回の追補改訂で規格に新たな要求事項が追加されたわけではないので、登録証を再発行する必要はないと思います。
ありがとうございます 最後に、マーティンさんから、気候変動に関連する行動はこれらの修正案だけではないかもしれないとのご指摘がありました。個々の技術委員会が行っている追加的な活動について、例を挙げていただけますか?
TC283(労働安全衛生マネジメント委員会)で何が起こっているかを説明させていただきます。委員会レベルの活動としては、特に気候変動が労働安全衛生に及ぼす影響に焦点を当てるため、2023年の初めに新しいタスクグループを立ち上げました。このグループは、姉妹委員会である環境マネジメントTC207の専門家の協力を得て、ガイダンス文書の概要を作成しました。実際に、気候変動が労働安全衛生に与える影響に対応した仕様書やPASが公開されています。このPASは、ISO PAS 45007として2024年末から2025年初頭を目標に発行される予定です。
現在、これと並行して、委員会のウェブサイトに、組織が特定した気候変動に関連する労働安全衛生リスクと、そのリスクに対処するために講じたさまざまな措置の事例を紹介するページを設けることができないか検討しています。
その先には、ISO 45001の改訂を開始する提案の投票にこぎつけたばかりです。現在、その改訂の計画段階に入っています。規格が2018年に発行されて以来、初めての改訂です。この改訂によって、今度の規格改訂で導入される以上の気候変動に関する追加的な言及を行うかどうかを検討する機会が与えられます。しかし、ISO 45001の改訂版が発行されるのは2027年頃になりそうなので、かなり長期的なプロジェクトになります。
そう考えると、ISOがなぜすべての規格を同時に追補改訂し、何年にも渡って規格の改訂版を発行して初めて効力を発揮するような措置に頼るのではなく、気候変動に今すぐ焦点を当てようとするような迅速なアプローチをとったのかがよくわかります。
ありがとうございました。ポッドキャストに戻ってきてくれて光栄です。あなたの洞察はとても貴重なものでした。
ありがとう、ホリー。またこうして参加できて本当に光栄です。
そして最後に、視聴者の皆様にお知らせです。Spotifyの私たちのホームページで、より多くのエピソードをお聴きいただくことで、新しい情報を入手いただけます。
LRQA Future in Focusポッドキャストをお聴きいただきました。お時間を割いていただきありがとうございました、またお会いできることを楽しみにしています。